板門店宣言と珍島物語

板門店宣言と珍島物語軍事境界線の上で、文在寅大統領と金正恩委員長はにこやかに握手をした。分断の長い歴史を思えば大変な出来事である。世界の耳目を集めた南北首脳会談について、またまた無責任な雑感を述べる。

「海が割れるのよ 道ができるのよ」

と歌い出すのは、天童よしみのヒット曲「珍島物語」である。珍島(チンド)とは朝鮮半島の南西端に位置する島である。潮の満ち引きによって、海割れが起きて、茅島里(モドリ)という島まで砂州の道が出来る。韓国では、この超常現象を霊登(ヨンドン)サリと呼んでいる。歌は生き別れた家族との再会を歌っている。でも実は、それだけではない。この歌にはもっと大きな命題が隠れている。

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「ヨンドンサリの願いはひとつ 散り散りになった家族の出会い」
「ふたつの島を つないだ道よ はるかに遠い 北へとつづけ」

サビの歌詞は、朝鮮半島に横たわる最大の問題を映し出す。もちろんそれは、南北分断であり、引き裂かれた民族の悲劇である。

「両首脳は、朝鮮半島にもはや戦争はなく、新たな平和の時代が開かれたことを8千万のわが同胞と全世界に厳粛に宣言した」

上記は板門店宣言の一文である。軍事境界線の上に建つ板門店は、南北分断の象徴であり、幾多の衝突と流血を繰り返してきた場所である。その板門店で、二人の首脳は、「平和と繁栄」を誓った。長らく反目してきた両国である。何をするにも一筋縄ではいかないかも知れない。たぶん茨の道だ。しかし、ケンチャナヨ、楽観主義がお家芸である。何はともあれ、両首脳は世界の前で誓ったのだ。

日帝統治、終戦、朝鮮戦争、分断、米ソ冷戦対立、朝鮮民族がたどった近代史は過酷だ。何がどうあれ、誰が何と言おうと、胸の奥に統一願望を秘めた民族にとって、この板門店宣言は希望の光だろう。それこそ「海が割れて道ができた」そんな思いだろう。韓国メディア関係者の涙が、それを物語っていた。

日本国内の反応はどうか。通り一遍の報道はするものの、いまいち昼行灯のように思える。そもそも伝えるメディア側が、首脳会談と板門店宣言の意義を理解しているのか怪しい。時を同じくして発覚したアイドルタレントの強制わいせつ事件にかき消されていた。

米韓中朝によって、東アジア安定のための枠組構築が進められる中で、日本は「蚊帳の外」だと揶揄されている。安倍首相は、そうではないと言い張るが、やはり取り残された感は否めない。これまで北朝鮮に対しては、バカの一つ覚えのように、圧力だ、制裁だ、ミサイルが飛んでくるぞ、とやってきたのもだからどうしようもない。手詰まりなのだ。先頃、とってつけたように日中韓首脳会談を行ったが、焦りの裏返しだ。

先の平昌オリンピックの場で、「米韓合同軍事演習を延期すべきではない」と主張した安倍首相に対して、文在寅大統領は「わが国の主権の問題であり、内政問題だ」と反発している。怒るのもムリもない。この時期、水面下では、南北首脳会談に向けた交渉が進んでいたハズである。それは民族の未来がかかった会談である。そこへ隣国からやって来た首相が「軍事演習をやめるな」と言うのである。愚の骨頂とはこの事だろう。

嘘とデタラメで塗り固めたような安倍政権である。国会を国民を欺き、公文書の改ざんまで発覚した。もうこの国の民主主義はズタズタである。しかしながら、厚顔な首相はいまだに居座っている。辞めるべきだろう。

そして今夜、米朝首脳会談は6月12日シンガポールで開催とのニュースが流れてきた。世界中が固唾を飲んで見守る会談だ。予断を許さないが、すべての民族にとって有意義な会談になる事を祈る。ヨンドンサリの願いはひとつだ。


“板門店宣言と珍島物語” への2件の返信

  1. 確かお父さんのときも韓国大統領と手をつないで雪解けムードを演出してましたよね。太陽政策と六カ国協議で得た資金を平和に費やさずに核兵器と弾道ミサイル開発に注ぎ込むんですから、今回のこのパフォーマンスは冷静に傍観するしかないでしょう。褒められたものではありませんよ。まして日本は南北朝鮮に騙され続けられている状況でして、なかば呆れて報道するしかないですよ。南北朝鮮は日本への内政干渉は嫌というほどやってますよ。そろそろ何でも日本が悪いんだーという方法は通用しませんよ。

    1. ゆたかさん、コメントありがとうございます。

      日本と韓国と北朝鮮はたいへんですね。いまだにケンカが絶えません。北朝鮮とは、話も出来ない状態です。記事では触れませんでしたが、日本と北朝鮮の間には、大問題が横たわっています。拉致問題です。メディアで年老いた横田夫妻の姿を見ると、子を持つ親として、私は居た堪れません。

      安倍政権は、「最大の懸案だ、解決に向けて最大限の努力をする」などと言いながら、もう何年も一向に進展しません。それは、外交のルートが無い上に、その努力もしないからです。「拉致問題を政権維持の道具にしている」と言われても仕方ありません。数日前に日中韓首脳会談がありました。記者会見で、首相はしたり顔で、拉致問題について「理解」を得られた、と語っています。寝ぼけています。北の首脳が、西側の玄関口まで来ている今、やらなければならないのは、首相自ら直接対話の道を開く努力です。どこまでいっても中国、韓国頼みの姿勢に、この政権の矮小さが見えます。

      「六カ国協議」の折、もらった金で、核ミサイル開発をした。けしからん。というお話ですが、それはもちろん、どこの国でも隣国に核兵器やミサイルなど造って欲しくありません。人民が飢える一方で、北朝鮮が核ミサイル開発にこだわってきたのもそうでしょう。
      一度は凍結に応じた核開発を、当時の金正日政権が再開したいきさつは、「六カ国協議」の前の「米朝枠組み合意」に遡る話になります。クリントン政権による「米朝枠組み合意」後、まもなく誕生したブッシュ政権は掌を返します。約束していた原油輸出の停止です。そこからは合意崩壊にましっぐらです。もう多くは書きませんが、「米朝枠組み合意」崩壊の大方の原因は米国にあります。

      ダイナミックに展開する東アジアの情勢です。残念ながら、日本の外交は指をくわえて観ているのが現状です。隣国を非難ばかりしても何も生まれませんし、行きつくところは、袋小路です。そろそろ幼稚な思考から脱却したいものです。今は何よりも、来月の米朝首脳会談の成功を祈ります。

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