右サイドを駈け上がった松井が相手ディフェンダーを軽やかに切り返して蹴りいれたボールはファーポスト側に居た本田の足元へ。トラップそしてシュート。日本が格上のカメルーンを撃破した瞬間だ。もう何度も放映されたシーンだが、サムライブルーの快進撃はここから始まった。
生き馬の目を抜く予選リーグを勝ち抜いて日本と韓国が決勝リーグへ進んだ。韓国は実力を発揮すれば突破かと思っていたが、正直、日本はちょっとシンドイかなと心配していた。直前の壮行試合の内容を観ればゲバ評が下がるのも無理ないところ。どっこい日本は見事な闘いぶりだった。日韓両国の決勝T進出は嬉しかった。僕にとっては母国と祖国だ。
日本は試合ごとに強くなった。鎧カブトの堅い護りで強豪オランダと互角に渡りあったし、日本刀の切れ味、文字通り伝家の宝刀のフリーキックでデンマークを一刀両断にした。そして決勝トーナメント。護り切った。決してパラグアイには負けていなかった。しかし勝負は非情だ。PK戦の幕切れはもらい泣きした。
韓国VSウルグアイ。韓国は日本よりひと足先に負けた。しかし凄かった。雨の中の激闘だった。南米の古豪ウルグアイに対して一歩も引かない韓国代表の戦いぶりに感動しない人はいただろうか。勝てなかったけど、アジアの虎と呼ぶに相応しい内容だった。
今大会はアフリカ大陸での開催、しかも南アフリカ共和国である。僕らの世代は、南アフリカと言えば「アパルトヘイト、人種差別政策の国」と学校で習った。地理でも社会でも教科書には、アフリカの国の情報なんて希薄なのに、70年代当時から悪名高いアパルトヘイトについてはそれを非難する記述があった。時は流れてその国で人類の平和と平等を謳う世界最大の祭典が行われたのだから人類は少しは進歩したのか。
日本と韓国。昔、着いて離れた腐れ縁の関係だ。その両国がW杯の舞台に立ち、決勝トーナメントに勝ち上がった。もう奇跡のようだ。W杯はサッカーの祭典であり、民族の祭典でもある。すべてを呑み込む世界観はW杯以外ではありえない。国を背負って命がけで闘う選手は、僕にとって、頼もしく、うらやましく、妬ましい。どうしようもなく纏わり付く感情は自分が在日三世である事を確認させてくれた。
いつの日か、決勝トーナメントで、できればファイナルかセミファイナルあたりで、日本と韓国が闘ってくれたら、本当にそんな日が来たら、嬉しいな。そんな感じでまた4年を待とうと思う。


