伊賀上野駅に降り立ったのは、連休明けの火曜日の事だ。三重県北部に位置する上野市は「忍者の里」が売り物の地方都市だ。また松尾芭蕉ゆかりの地だということで、駅舎の前には石碑がある。その脇で僕は自転車を組み立て始めた。基本的には二本のタイヤを着けるだけだが、長丁場に備えてブレーキ、シフト、空気圧などに異常が無いかチェックする。

駅から南へ向いて走り出す。天気は晴れなのか曇りなのか良く判らない。市街地の中に上野城が見える。せっかくだから上野城には寄って行く事にした。上野城公園の坂を登る。坂の途中で舗装路は砂利道に変わった。パンクが怖いから、自転車から降りて押して行く。天守閣の真下まで来ると、城をバックに写真を何枚か撮る。公園の一角に忍者屋敷という施設があった。元来、こういった怪しげな施設は大好きだ。しかし、ゆっくり見ている時間が無い。後ろ髪ひかれながら、上野城を後にした。街のそこかしこに「忍者」という言葉が見える。上野は面白くて美しい街だった。そのせいか、チョット長居し過ぎたようだ。
話は今朝に戻る。タクシーで京都駅に着いたのが7時50分だった。バラした自転車が入った輪行袋を担いで8時9分発のJR奈良線の快速に乗り込んだ。通勤通学のラッシュ時だから輪行袋の置き場所に苦労するのか思ったが、車両の最後尾は空いていた。適当な場所に輪行袋を立て掛ける。本当は紐やフックを利用して転倒を防ぐべきだろうが、何も用意していなかった。そのままでも結構安定してくれたので、近くの席に座った。駅で買ったパンを喰う。

約50分で木津駅に到着した。乗換えだ。乗り換え時間は2分、ボヤボヤしている時間は無い。輪行袋を担いで階段を下りて、地下通路を走り、目的のホームの階段を駆け上がる。そんなタイトな乗換えをこなして乗り込んだのはJR大和路線である。まもなく電車は駅を出た。一駅6分で加茂駅に着く。そこでまたまた乗換えだ。今度も乗り換え時間2分と短い。しかし、今度は降りたホームに電車が待っていてくれた。自転車を持って伊賀上野行きを決めたのは、この電車に乗りたかったからと言ってもいいぐらいだ。最後の電車はJR関西本線(加茂ー亀山)である。

関西本線は名古屋駅と大阪の難波駅を結んでいて、その距離174.9kmの路線だ。JRが民営分社化されてからは、名古屋−亀山間59.9kmはJR東海,亀山−難波間115.0kmはJR西日本の縄張りとなっている。その亀山−加茂間は、ほぼ木津川に沿うように走っている。その区間は未だに電化されていない単線で、走れるのはディーゼル車と機関車だけだ。僕が二回の乗換えを経て加茂駅から乗り込んだのはキハ120系と呼ばれるディーゼル車である。二両編成の列車に乗務員は運転手のみというこのワンマン列車が停まる駅のほとんどは無人だ。無人駅から乗った客は運賃表に従ってお金を運賃箱に入れなくてはならない。つまりバスと同じ方式である。たぶんつづく。