自転車: 2005年9月アーカイブ

 最後の歯を使った。普段はまず使わないトップギヤだ。渾身の力を込めてペダルを回す。遥か向こうを見渡せる絶好の下り直線でグングン加速した。首の血管が膨らんで筋がきしむ。アドレナリンが全身に廻って神経を高ぶらせる。何か踏めば、自転車ごと何処かへ吹っ飛んでしまいそうだ。快感と恐怖が交叉する。時速60kmぐらいは出たのかと思ったが、後で確かめると58kmだった。中年男の脚力ではそんなところか。伊賀上野から島ヶ原に至る国道163号での事だった。
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 国道を外れて高山ダムに立ち寄った。同ダムは京都、奈良、三重に跨る巨大ダムで、名張川を堰き止めて1969年に完成している。上流には名勝、月ヶ瀬梅渓がある。僕は月ヶ瀬の幻想的な風景が好きで何度も訪れている。湖畔から山裾にかけて約1万本の梅が咲き誇る2月から3月は見物である。本当はもっと上流へ行きたいのだが、時間の都合であきらめる。
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 笠置橋を渡って笠置駅付近の集落で天丼を食った後、木津川に沿って国道163号をひたすら西へ。対岸を走るのは今朝乗って来た関西本線だ。景色は良いが路肩が狭い。歩道も逃げ場も無い。それでも何とか泉大橋に到着。ここから先は自転車道だ。案内板に「嵐山・渡月橋まで45km」とある。ここまでの走行距離68km、すでに脚はヘタレ気味。「大丈夫、君は気力で走るタイプだ」と自分の脚に言い聞かせるのだった。

 伊賀上野駅に降り立ったのは、連休明けの火曜日の事だ。三重県北部に位置する上野市は「忍者の里」が売り物の地方都市だ。また松尾芭蕉ゆかりの地だということで、駅舎の前には石碑がある。その脇で僕は自転車を組み立て始めた。基本的には二本のタイヤを着けるだけだが、長丁場に備えてブレーキ、シフト、空気圧などに異常が無いかチェックする。
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 駅から南へ向いて走り出す。天気は晴れなのか曇りなのか良く判らない。市街地の中に上野城が見える。せっかくだから上野城には寄って行く事にした。上野城公園の坂を登る。坂の途中で舗装路は砂利道に変わった。パンクが怖いから、自転車から降りて押して行く。天守閣の真下まで来ると、城をバックに写真を何枚か撮る。公園の一角に忍者屋敷という施設があった。元来、こういった怪しげな施設は大好きだ。しかし、ゆっくり見ている時間が無い。後ろ髪ひかれながら、上野城を後にした。街のそこかしこに「忍者」という言葉が見える。上野は面白くて美しい街だった。そのせいか、チョット長居し過ぎたようだ。


 話は今朝に戻る。タクシーで京都駅に着いたのが7時50分だった。バラした自転車が入った輪行袋を担いで8時9分発のJR奈良線の快速に乗り込んだ。通勤通学のラッシュ時だから輪行袋の置き場所に苦労するのか思ったが、車両の最後尾は空いていた。適当な場所に輪行袋を立て掛ける。本当は紐やフックを利用して転倒を防ぐべきだろうが、何も用意していなかった。そのままでも結構安定してくれたので、近くの席に座った。駅で買ったパンを喰う。
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 約50分で木津駅に到着した。乗換えだ。乗り換え時間は2分、ボヤボヤしている時間は無い。輪行袋を担いで階段を下りて、地下通路を走り、目的のホームの階段を駆け上がる。そんなタイトな乗換えをこなして乗り込んだのはJR大和路線である。まもなく電車は駅を出た。一駅6分で加茂駅に着く。そこでまたまた乗換えだ。今度も乗り換え時間2分と短い。しかし、今度は降りたホームに電車が待っていてくれた。自転車を持って伊賀上野行きを決めたのは、この電車に乗りたかったからと言ってもいいぐらいだ。最後の電車はJR関西本線(加茂ー亀山)である。
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 関西本線は名古屋駅と大阪の難波駅を結んでいて、その距離174.9kmの路線だ。JRが民営分社化されてからは、名古屋−亀山間59.9kmはJR東海,亀山−難波間115.0kmはJR西日本の縄張りとなっている。その亀山−加茂間は、ほぼ木津川に沿うように走っている。その区間は未だに電化されていない単線で、走れるのはディーゼル車と機関車だけだ。僕が二回の乗換えを経て加茂駅から乗り込んだのはキハ120系と呼ばれるディーゼル車である。二両編成の列車に乗務員は運転手のみというこのワンマン列車が停まる駅のほとんどは無人だ。無人駅から乗った客は運賃表に従ってお金を運賃箱に入れなくてはならない。つまりバスと同じ方式である。たぶんつづく。

 我らが阪神タイガースのマジック点灯の翌日、京都は素晴らしい天気になった。大陸の高気圧は抜けるような青空と乾いた空気をくれた。9月の京都は待てど暮らせど残暑が厳しく、ここ数日の低気圧や台風がもたらす湿った空気の不快さを罵る日々が続いていた。そしてちょうど9月も折り返しの今日、やっと秋らしい気候になった。一シーズンに何度も無いかも知れない爽やかな好日である。外に出よう。移動の手段はあの乗り物だ。人類が操る移動体の中でも、最も季節を感じられるあの乗り物である。それ以外は考えられない。
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 自転車道を北進して辿り着いたのは嵐山である。渡月橋を渡る風も涼しげだ。週末からの三連休を控えている行楽地であるが、今日のところは人出は多くない。橋を歩く人から「気持ちが良いね」という声が聞こえた。数日前なら聞かれるハズも無い言葉だ。本当に今日は気持ちがいい。天候というのは気圧配置ひとつでこれほどガラリと変わるモノなのか。心配したが、今年も夏の次は秋が来るようだ。


 仕事がら夜が遅い僕は、深夜に食べて飲んで寝る、という日々だ。そんな相撲部屋のような生活で身についた脂を何とかしたいと思い、それが理由で自転車に乗っている訳だが、そればかりではない。元々自転車は好きだったし、何と言っても爽快さと手軽さが良い。狭い京都の街の移動には自転車こそが王道だ。店先に愛車を乗りつけるなんてのもカッコ良いではないか。さらに余計な贅肉が削ぎ落とされたロードバイクの姿は究極だ。美しい事この上ない。それに乗っていれば、いつか自分の体もそうなるのではないか、と妄想している秋である。

 京都府南部の降水確率は40%という予報を見て、僕はどうするべきか迷った。集まってくれた人達がズブ濡れになってしまう可能性だってある。あっさり中止にした方が気が楽ではあった。しかし、一方で降水確率40%なんてのは全然降らない事だってある。人並みに悩んだ末、「本日決行します」と掲示板に書き込んだのは午前2時過ぎだった。


 朝から空一面に薄い雲が立ち込めていた。7時過ぎに家を出る。桂大橋から自転車道に入り南へ。空は時より太陽が覗こうとしているが、雲のベールのおかげで、どうもハッキリしない。待ち合わせ時間の10分まえに御幸橋に到着した。程なく上野さんと大西さんも到着され、初対面のお二人と挨拶と握手を交して暫く話した。とりあえず、ながれ橋へ行く事にした。
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 ながれ橋に着く頃には空がだいぶん明るくなってきた。雨が心配で早々に解散するつもりでいたが、予定を変更する。宇治を目指すことになった。その後の足取りは次の通りである。ながれ橋→宇治橋→天ヶ瀬ダム伏見→自転車道で解散
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 初対面にも関わらず、上野さんと大西さんが気持ちよく接して下さった。お陰で楽しい時間を過ごす事ができた。ここでお二人に感謝の気持ちを述べたい。ありがとうございました。

 「秋たけなわ」と言うにはまだチョット早い9月の日曜日、ブログで知り合った自転車乗りが集まってオフ会を開くことになった。と言ってもお酒を飲むのではなく、秋の京都か大阪か何処かを走ろうというワケだ。ペースはゆっくりと楽しくツーリングで行くのだ。参加者は今のところオッサン三人であるが、実は三人とも初対面というそれはそれは恐ろしい企画だ。果たしてどうなるのか、言いだしっぺの僕にさえ分からない。
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 自転車を漕ぐ気さえあれば、堅苦しい制約はいっさい無い。初秋の自転車道を一緒に走ってやってもいいという方、汗臭い集まりが好きだという方、怖い物見たさで参加したいという方、大歓迎!気になる当日の天気であるが、知り合いの黒魔術師に頼んで何とか晴天にしたいと思っている。この無責任なツーリングに参加希望の方は、お名前と「参加希望」と書いてweblog@suloboy.comまでメール下さい。決まっている事は下記の通り。


日時:平成17年9月11日(日) 午前8時
集合場所:御幸橋の散歩道
行き先:たぶん宇治方面、でなければ何処か。
解散時間:決まってないが夕方だろうか・・
その他、オフ会に関するお知らせは、こちらの掲示板をご覧下さい。

 御幸橋の南詰は分かれ道である。石清水八幡宮を抱く男山を正面に、左へ行けば木津川、右へ行けば淀川だ。一瞬躊躇した後、僕は自転車を右に向けた。左に京阪電車、右に淀川を眺めながら京都守口線と呼ばれる道を行く。なだらかに弧を描いた道を暫く行くと、京阪樟葉駅とゴルフ場が見えてきた。


 樟葉辺りで河川敷に降りてみた。自転車が走れる舗装路があるのだが、ウッソウとした草や木で川の姿も見えない。暑いし、川沿いを走っているにも関わらず、草しか見えないのはどうも納得が行かない。加えて、所々で現れる車止めでは、いちいち自転車から降りなければならなかった。
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 枚方大橋に近づくと、淀川が見えてきた。川幅があって雄大だ。公園も綺麗に整備されていている。淀川を見ながら公園や土手の舗装路を走った。大阪湾まで行きたいところだったが、仕事もあるので鳥飼大橋で引き返すことにした。

 
 実は初めて走った淀川だったが、残念なのは先にも言った車止めだ。その頻度もさることながら、自転車から降りる事を強要しているのだ。マッタクいただけない。自転車の走行をいちいち止める河川敷なんて、なんやそれ!と言いたい。車やバイクを締め出したいのだろうが、そのために自転車乗りは非情に困っている。と誰か役人に伝えて欲しい・・。

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