自転車: 2006年2月アーカイブ

 2月も残り少なくなったある日、嵐山にやって来た。渡月橋の北詰から旅館や料亭が並ぶ路地を行く。駆るのは、待ち焦がれた季節がもうそこまで来ている事を鼻の穴の粘膜からも感じられるという例のウフフだ。暫く行くと寺の敷地に出た。天龍寺である。この辺りの敷地の相当部分は天龍寺の境内である。適当にウロついても大概は天龍寺に行き当たる。
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 人けも疎らな境内に赤い花が咲いていた。これは椿なのか山茶花なのか。どうも判らない。椿は花が首ごと落ちることから、武家からは忌み嫌われたという。椿ならば首から落ちているハズだが、木の根元を見ると結構花びらが散っている。つまりこの花は椿ではなく山茶花ということか。それにしても寒さにじっと耐えて凛と咲いている姿は芯の強さを連想させる。山茶花の花言葉は「困難に打ち勝つ、ひたむきさ」という事だが、異国の大舞台でプレッシャーに打ち勝ったこの人も芯は相当に強そうだ。感動した。

 水の都、大阪は美しかった。大阪城と高層ビルの間を川が流れる風景を京橋口あたりの陸橋から眺めた。建物も川も緑も全てが洗練された大都会の姿を見ると、自分が凄く田舎者に思えた。大きな声では言えないけれど、生まれて初めて大阪城公園に入った。風は冷たいけれど青空が見えた2月の平日の事である。公園にはジョギングする人やら、散歩する人やら、旅行者やら、日本人やら、外国人やら、天気のせいか、人が大勢いた。
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 ずっと淀川を下って来た。もちろん自転車である。この日は頼れる人が一緒だった。ブログで知り合ったみーこさんだ。片道50kmを文字通り引率してくれた。八幡、枚方、守口と逆風の中を走り淀川大堰に至る。隣接する毛馬こうもんから大川を巡る。幾つもの橋を潜って、開花にはまだ程遠い桜並木の散歩道を漕ぎ進む。見えて来るのは、川と街が融合した大都会の風景だった。

 
 京都へ向かう帰り道は追い風でスピードに乗れた。と思ったら途中、雨が降ったり、強い西風や逆風に苦しめられた。とどめは京都に入ってからのミゾレ混じりの冷たい雨だった。いやはや辛く楽しい一日だった。何とか100km。ヘロヘロ。

 陸上自衛隊の桂駐屯地と阪急電車の線路に挟まれた直線道路は1kmぐらいはあるだろうか。交通量もそう多くないその道路を南進する。駆るのは乗れば肉体の尊厳が取り戻せると巷で噂になっている例のアレだ。暫く行くと丁字路にぶつかる。この春で開業からマル3年になるという洛西口駅の踏み切りを渡り西へ向く。道は徐々に登りになって来る。物集女街道を横切ると坂の斜度は目に見えて増して来るが、腹に脂が乗った僕のようなオヤジでも平気なくらいだから大した事はない。竹林の丘陵地と洛西ニュータウンの住宅街をやり過ごせば、そこが大原野だ。
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 大原野とはつまりが京都の西の果てである。西山連峰の麓に広がるのは田畑ばかりだ。もちろん山腹には寺院も多数あるのだが、シーズンともなればドッと人が押寄せる京都東山辺りに比べればチョット趣が違うかも知れない。こちらの方がより牧歌的だ。その田畑を縫うように農道を進んで、坂道を登って行く。すると分かれ道に出た。野生の感で左に進む。登りはきつくなってきた。葛篭折れを登って行く。汗だくで峠に辿り着いた。峠付近にまた分かれ道があった。案内板がある。どうやら左の急坂は善峰寺に通じているらしい。行ってみたが、舗装路は直ぐに無くなった。ロードバイクでは無理っぽいので引き返した。そこから先は谷に向かって下りだった。灰谷橋と書かれた小さな橋を渡ると小さな集落に出た。道らしい道はここで途切れている様に見えた。見上げる西山は雨霧に煙っていた。

2008年7月

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