虫が地中から這い出るのと同じ理由で家を出た。外をウロウロするには絶好の暖かく穏やかな日和だ。大原野から丹波街道を南進する。さしあたって見えるのは、民家と田畑と竹林だ。跨るのは、冬の寒さを言い訳にして、穴熊のような怠惰な生活をしていた中年おやじにも、走る勇気と季節がある国に生まれた喜びを、鼻の穴の粘膜からも感じさせてくれるという例のルンルンだ。へクション!
丹波街道とは府道10号の別名である。道は京都西部の大原野、乙訓あたりの丘陵地を抜けて、北は大江、南は大山崎を繋いでいる。道は西山連峰の麓に張り付くように延びていて、脇には寺社や古墳の類がたくさんある。8世紀、平安京遷都の直前、そこにあったのは長岡京の都だ。当然だが地域の理は相当に古く、古刹の宝庫でもある。
サントリーがある大山崎あたりに近づくと勾配が増してくる。頭上は天王山だ。坂を登って天王山の麓にある観音寺(山崎聖天)の高台の公園で暫く休憩。電車と街を眺めてボーっとした。人間ボーっとする事は大切だ。ふと上に目をやると桜が咲き始めていた。
