時事・ニュース: 2006年7月アーカイブ

 W杯ドイツ大会はイタリアの優勝というよりは"ジダンの頭突き"で幕を閉じた。優勝したイタリアへの賛美は何処へやら。善くも悪くも、新聞やテレビは「ジダンの頭突き」一色である。昔、サッカーに明け暮れたオヤジがチョット感想を書く。


 踵を返したジダンが、つかつかと歩み寄ってマテラッツィの胸元に"パッチギ"を放り込んだ。テレビでその場面を何度も見せられた。見事だった。演技よろしくマテラッツィは大袈裟にピッチに倒れた。ジダンはレッドカードで退場となってしまった。


 サッカーの試合では暴力行為で選手が退場処分になるなんて事はザラにある。ただ今回に限っては事情はチョット特別なようだ。事件を深刻にしている要因が幾つかある。それは先ず、舞台はW杯の決勝であった事。退場処分となったジダンはフランスの英雄であった事。そのジダンはこのW杯で引退を決めていた事。ジダンはアルジェリア移民の子だった事。どうやらマテラッツィは人種差別もしくはそれに近い事を言ったようである事。日本でも大変な事件として報道されているけれど、サッカー立国がひしめく欧州あたりでは、それはそれは大事件である事は想像に易い。
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 テレビで会見したジダンによると「母と姉に対する誹謗中傷を繰り返し受けた」と言っている。歯切れの悪いマテラッツィの発言を合わせて考えると、どうせロクな事は言っていないだろう。しかしながら、僕はジダンの行為が良いとも思わないし、退場処分とした主審の判断も当然だったと思う。蹴りだのパンチだの頭突きだの、そんな行為を許していたらサッカーにならない。ただ、家族を中傷されてカッとなったジダンの事を僕は嫌いじゃない。


 一連の報道を見ていると、事の本質は「差別や人種」といった事に集約されてきそうだ。そうなれば事は簡単には治まらない。ジダンの行動は少々稚拙だったかも知れない。でもそれによって世界中に流れた映像は、あらゆる人種を飲み込んだ唯一のスポーツであるサッカーが、そうであるが故に患う病巣の一端を晒した瞬間でもある。そして、肌の色も、宗教も、貧困も、全てを巻き込んだ戦いがサッカーなんだと改めて思い知らされた。僕は頭突きでピッチを去ったジダンを見たとき、アジア人が勝てない理由を見たような気がした。FIFAがジダンに与えた最優秀選手の称号を取り消すというならそうすればいい。家族と自らの尊厳を護るためレッドカードで現役最期を迎えたサッカー選手、ジダンを僕は忘れない。

 
 文章冒頭の"パッチギ"とは韓国語で「頭突き」の意味。ついでに言うと"パッチギ"は放り込むモノだ。昨年、井筒和幸監督の作品で同名の映画がヒットした。あれは面白かった。写真は我家のインチキ風水師が作る夏の定番、冷麺。味はまさに"パッチギ"だろうか。

2008年11月

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