桜を数える妻とキッチンに立つ夫

3月の終わり、例年より少し早く、背割り堤の桜は満開を迎えた。青空に薄いピンクのソメイヨシノが映えている。私は毎年のように、この桜を観ている。その桜並木を家人と歩いた。家人が言った。

「あと何回桜を観れるかな」

なんでも先ごろ聴いた竹内まりやの曲の中に、同じ問い掛けがあったという。確か「デニム」というアルバムに、そんな歌があった。調べると「人生の扉」という歌だった。私も歌の詩に共感を覚えながら桜を眺めた。そして、桜が散ってしばらくすると、私たちは一つずつ年を取る。

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龍の湖と月ヶ瀬梅渓 -春の輪行その1-

春の早朝。パッキングしたロードバイクを担いで、電車に乗った。自転車業界で言うところの輪行(自転車を手荷物にして電車に乗る事)である。スポーツバイクが人気の昨今、輪行については、あちこちの雑誌やメディアで紹介されている。自転車のパッキングと多少の作法を習得すれば、電車と自転車の連係で活動範囲は格段に広がる。花粉の飛散と共にオヤジの鼻はムズムズ、気持ちはソワソワ、前夜からゴソゴソと支度をして、ひとり善がりなオヤジの旅の始まりである。

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スコッチ&レイン -都雅都雅にて-

四条寺町の界隈。昔は電気屋がずらりと軒を連ねていたが、今は夢の跡だ。その寺町通りの一角、雑居ビルの地階に都雅都雅がある。街にはボチボチXmasの装飾が見え出した週末、インチキ風水師こと家人を連れやって来たのは、京都の老舗のライブハウスである。

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梅雨の政局放談 -俺に言わせろ-

梅雨の日曜日。ビルの谷間から雨上がりの夜空が覗く京都駅前。オヤジ3人がエビスBARのテーブルに着いた。皆うるさい50代だ。ビール片手に何を話すのか。この日の議題は『政治』だ。

森友、加計と次々に出てくる疑惑。春先からの数ヶ月、メディアは盛んに報じた。発端は森友学園の土地取引である。「安倍晋三小学校」よろしく、少し前まで安倍首相の親衛隊長だったような籠池氏が、今は政権の仇敵になっている。ドラスティックな展開と個性際だつ登場人物、新喜劇もかすむようなドタバタ劇である。

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京都マラソン2017

松尾橋から渡月橋に向かう道路はランナーたちで埋め尽くされていた。桂川を遡上する走者の群れは、渡月橋の少し手前で右に折れて行く。清滝道の高架を経て、丸太町通りを横断して、そこからは、仁和寺や龍安寺などの世界遺産が点在する”きぬかけの路”へと入って行く。嵯峨野、御室、衣笠と緑豊かな道が続くエリアだ。まだ序盤、ランナーたちは元気に見える。

京都マラソンが開催された日曜日、好天に恵まれた。冷たい朝だったが、2月の青空と太陽があった。予報によれば、日中の気温は上がって暖かくなるとのことだった。

京都マラソンは、大阪、神戸と同様、まずは抽選に当たらなければ出場できない人気イベントだが、同級生たちが集うランニングチームから3人の精鋭が出場している。それじゃあと、バックパックに一眼レフと食料を入れて、ペダル式の金斗雲を駆って、応援に出てきた。

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チャイニーズレストラン

ロビーの中央に立てられたXmasツリーを見れば、師走の風情である。大正チックに設えられたロビーのソファーには数人の客がいた。見たところ、ほとんどが私より年輩者だ。めったに来ないホテルに来たのは、食事をするためである。同伴者は、インチキ風水師こと妻である。

「京都ホテルオークラ」は、元は「京都ホテル」である。「京都ホテル」と言えば思い出す事がある。良くも悪くも、世の中が脳天気で明るかったバブル期、60mという今の高さへの改築をめぐって、景観論争が繰り広げられたのだ。それは、議会、市民団体、仏教会、マスコミなどを巻き込んだ、けっこう激しい論争だったと記憶している。かくして、出来上がったホテルは周辺の建造物を見下ろす威容である。京都市役所の東隣、河原町御池という立地もあって、今や完全に街のランドマークである。

中華料理と言えば、「餃子の王将」と私の相場は決まっているのだが、今回ばかりは逸脱している。ホテルの中華レストラン、着いた席は、窓から庭が見える静かなテーブルだ。21回目の結婚記念日。紛争がなければ、ささやかではあるが、こうして食事するのが慣例である。

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夏も近づく狸うどん、抹茶アイスも食う -和束・信楽100キロ-

yoshiminemichi-nodo02晴天にめぐまれた5月の日曜日、家出した。駆るは、性懲りもなく、「俺もまだまだイケるんじゃないか」という50男の妄想と勘違いを見事に演出してくれるロードバイクである。この乗り物には、自動車メーカーがいくら燃費計算のインチキをやろうが、化石燃料の類はいっさい必要ない。乗り手が食ったモノ、それこそが燃料だ。巷では省エネだのエコだのと、命題のように聞かれる昨今だが、ロードバイクこそが、正真正銘、究極のエコマシーンである。

柳の新芽がまぶしい桂川。5月の日曜日ともなれば、自転車道はサイクリスト達で盛況だ。この日は有難い事に同伴者がいた。同級生のランニングサークルを率いるKさんである。どこへ行こうか、何を食べようか、などと話をしながらペダルを進めた。

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