天ヶ瀬ダムと石山寺と南禅寺の青瓶珈琲

アーチ型のダムサイト越しに紅葉が燃えていた。晩秋の弱い太陽が照らすのは金糸銀糸の広葉樹たちだ。桜も紅葉も散りぎわが美しいというが、さもありなん。人造物であるコンクリート壁と自然とが作る風景は見事である。

師走になったばかりの平日、車の助手席に家人を乗せて家を出た。今時は、北の方から寒気団が下りて来ない限り、穏やかな天候が多い。朝の空気は乾いて凛としている。京都の紅葉劇場も千秋楽が近いが、紅葉を観ようとやって来たのは、宇治川の上流、天ヶ瀬ダムである。ベタでささやかではあるが、夫婦紅葉散策は恒例の行事である。

小学校の遠足だったり、釣りだったり、若い頃、赤いクーペに乗って夜な夜な攻めた宇治川ラインだったり、誰かの車がオシャカになったり、思い出はいろいろある。そんな天ヶ瀬ダムだが、オヤジになった今、年に数回は、ロードバイクでやって来る。時速20キロで観る景色はどうにも魅力的だ。

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桜を数える妻とキッチンに立つ夫

3月の終わり、例年より少し早く、背割り堤の桜は満開を迎えた。青空に薄いピンクのソメイヨシノが映えている。私は毎年のように、この桜を観ている。その桜並木を家人と歩いた。家人が言った。

「あと何回桜を観れるかな」

なんでも先ごろ聴いた竹内まりやの曲の中に、同じ問い掛けがあったという。確か「デニム」というアルバムに、そんな歌があった。調べると「人生の扉」という歌だった。私も歌の詩に共感を覚えながら桜を眺めた。そして、桜が散ってしばらくすると、私たちは一つずつ年を取る。

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冬のオリンピックとフキノトウ

暦の上では立春を過ぎている。しかしながら今年の寒さは別格、例年になく厳しい冬である。「アナと雪の女王」の仕業か、北陸あたりでは、道が閉ざされて、街が凍りついている。立春とは言うが、どう見ても今が寒さのピークで、春は遥か彼方だ。これほど厳しい冬をくぐり抜けたあかつきに、訪れる春は、さぞかし素晴らしいに違いない。そう期待しておく。

コタツでオヤジにとってのソウルフードのトックを食べながら、テレビで平昌オリンピックを見ていた。しかしまあ、氷上や雪上のスポーツにあまり興味がないせいか、いまいち面白くない。メディアを見るかぎり、今回のオリンピックは、競技そのものよりも、北朝鮮によるオリンピック外交や各国の思惑が注目されている。分断された半島国家の真ん中で開催されたオリンピックの運命か、政治色は強い。さもありなん。

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神戸元町エビアン珈琲とあすなろの巨木

緑色のエンブレムには「since1952」とある。1952年と言えば、まだ終戦から7年である。喫茶店文化のメッカ神戸元町にあって、間違いなく老舗だ。妻を伴って元町に来ると、いつも立ち寄るのが、エビアン珈琲ショップである。

みごとに昭和チックな雰囲気を醸す店内は、緑色の調度が印象的だ。店の中ほどに着席すると、ウェイトレスが注文を取りに来た。「ホット珈琲2つ」と伝えた。一杯380円也。税込みである。

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大雪の週末と鶏肉のグリル九条ネギ添え

呼んでもいないのに冬将軍がやって来た。北日本はおろか、西日本一帯にも大雪を降らせた。シベリア発の爆弾寒波が一発来ればこんなものかも知れないが、のんべんダラリと小春日和のような正月を過ごしたオヤジ風情には、なかなか強烈だった。

数日前からお天気キャスターが、強い寒波が来るぞ来るぞ、と脅すものだから、身構えてはいた。しかし、土曜日の夜は新年会の予定があった。京都市内のとある店に中学の同級生たちが集まって、ワイワイと盛り上がっていた。楽しい時間はアッというまに過ぎる。夜も深けたので、さあ帰ろうと店を出ると、ソコは雪国だった。しかも猛吹雪と来た。雪は朝まで降り続いた。

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チャイニーズレストラン

ロビーの中央に立てられたXmasツリーを見れば、師走の風情である。大正チックに設えられたロビーのソファーには数人の客がいた。見たところ、ほとんどが私より年輩者だ。めったに来ないホテルに来たのは、食事をするためである。同伴者は、インチキ風水師こと妻である。

「京都ホテルオークラ」は、元は「京都ホテル」である。「京都ホテル」と言えば思い出す事がある。良くも悪くも、世の中が脳天気で明るかったバブル期、60mという今の高さへの改築をめぐって、景観論争が繰り広げられたのだ。それは、議会、市民団体、仏教会、マスコミなどを巻き込んだ、けっこう激しい論争だったと記憶している。かくして、出来上がったホテルは周辺の建造物を見下ろす威容である。京都市役所の東隣、河原町御池という立地もあって、今や完全に街のランドマークである。

中華料理と言えば、「餃子の王将」と私の相場は決まっているのだが、今回ばかりは逸脱している。ホテルの中華レストラン、着いた席は、窓から庭が見える静かなテーブルだ。21回目の結婚記念日。紛争がなければ、ささやかではあるが、こうして食事するのが慣例である。

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奈良のカレーライス

OLYMPUS DIGITAL CAMERA真夏の太陽は今が出番とばかり燃えている。朝ッパラからギラギラのドヤ顔で、鬱陶しいったらありゃしない。マクドのハンバーガー&ポテトじゃあるまいし、頼みもしないのに高気温と高湿度がセットである。

レーパンを穿いて、ジャージを着て、凍らせたボトルを持って、身支度を整え、家を出た。駆るは、ひきこもり勝ちな現代人を外へといざなうと意味では、巷で話題のポケモンGOよりも、ずっと健康的で、ノスタルジックで、”どこか遠くへ”というオヤジ世代の放浪本能に見事に応えてくれるというロードバイクである。

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