善峰川のホタル

西山連峰の釈迦岳の東、善峰寺の足元で湧き出た水は、善峰川となる。竹林と棚田を縫って流れる善峰川は、いくつかの支流を束ねて、大原野を貫いている。梅雨前線が南へ下がったある日の夕方、善峰川の上流を訪ねた。

初夏の夕暮れ、里山の空気は心地良い。群青の暮れ行く西の空に山の稜線が浮かんでいる。子供の頃の記憶なのか、埋め込まれた遺伝子なのか、どうしてか6月の薄暮は郷愁的だ。

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清流は棚田を縫って流れている。田圃の蛙はまだ静かだ。雨が降らない、風の穏やかな、初夏の夕暮れ、と条件は整っている。光の妖精は姿を現すのか。

川に架かる橋の上で、カメラと三脚を準備した。カメラの設定はすべてマニュアルだ。今夜に限っては、オートフォーカスも当てにはならない。暗がりの微かな光を撮るために、シャッター時間は長い。最低でも2分ぐらいは必要だ。

夜の帳(とばり)が降りる頃、水際の草むらが光り出した。弱く微かな点滅だ。ゲンジボタルである。草むらの光はその数を増しているが、まだ飛ばない。じっと待つ。そして飛び立った。一匹、二匹、三匹、光の点滅が暗闇を舞う。数を増したホタルは乱舞を見せてくれた。空に梅雨雲がたむろする静かな夜のことだった。

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