桂川チルドレン

「桂川には行ってはいけません」

kuzebashi40s-01私が小学生だった頃、学校の先生からいつも聞かされていた言葉だ。桂川は行ってはいけない場所だった。もちろん水の事故から子供を守るためなのだが、夏休みの前になると、語気はさらに強まる。全校生徒が集まる朝礼の場で、校長が言う。「長い夏休みに入りますが、桂川に絶対に近づいてはいけません」と念を押された。

そうは言うものの、桂川は、魚やザリガニをはじめ、水場の生物がいっぱいいる。絶好の遊び場だし、自然の宝庫だ。行けば楽しいに決まっている。しかも目と鼻の先だ。子供たちにしてみれば、”禁断の魔境”こそが行ってみたい場所である。桂川はそんな場所だった。

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50歳を過ぎた今でも、桂川で遊ばせてもらっている。それはそこに自転車道があるからである。どこか遠くへ行きたい自転車乗りからすれば、嵐山から木津まで延々と続く自転車道は、ロングライドの教習所だ。私が自転車に乗るようになったのも、よくよく考えると、そこに桂川と自転車道があったからだと言えなくもない。

6月のある日曜日、自転車道に繰り出した。しかもオヤジ二人である。いつも一人で走る私に同伴してくれたのは、中学の同級生のKさんである。彼はフルマラソンもこなすアスリートである。一緒に自転車に乗ろう、という一年越しの約束が実現した日だった。

我々は二人とも、京都市の南部、上鳥羽、吉祥院で大きくなっている。同地は、桂川が育んだ土地だ。無責任にどんな所かと言えば、田畑と町工場の脇を桂川が流れていて、九条通りで東寺の五重塔がランドマークする、という土地である。そこで作る野菜と言えば、九条ネギとキャベツだろう。本当に大雑把だが、だいたいまあそんな感じだ。

そんな桂川チルドレンのオヤジ二人が、サドルを並べて走った。いろいろ話をしながら、そこそこ頑張って走った。自転車道の終点、泉大橋に着いた頃には、もうハラペコである。それで回転寿司に飛び込んで、あれやこれやと、むしゃむしゃ食べた。本当によく食う。各自の払いは約1500円也。

150607narahe002元気なオヤジは、奈良まで脚を延ばした。東大寺は相変わらず鹿の糞だらけである。日本人観光客、中国人観光客、修学旅行生に混じって、鹿もウロウロしているからまあ大変である。自転車を引いて歩くのだが、サイクルシューズで鹿の糞を踏まないように注意しなければならない。

臭くて可愛い鹿と遊んで、ソフトクリームを食べて、マッタリしたらもう帰る時間だった。初夏の好日90km、いっしょに走ってくれた同級生に感謝したい。

冒頭の写真は、昭和40年代初頭の桂川、架かる橋は久世橋。

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