赤い指切りグローブ

wpid-fb_img_1440033711159.jpg夕立の雨が降ると、残暑も一息である。濡れた竹林には凌ぎやすい空気が立ち込めた。大原野の田圃はまだ青いが、稲穂は実りを見せている。空気が冷めた夕時、里山を飛ぶ赤トンボが、季節が進んだ事を教えている。

少しずつ季節は流れて、当たり前だが、その分歳をとっている。脚元にまとわり着いていた子供たちは、いつの間にやら大学生と高校生で、私とほぼ同じ目線にある。何を訊いても、そっけない態度で、会話は続かない。彼らが見つめるのは、スマホかパソコンばかりで、親の顔を見る事は5秒とない。

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OLYMPUS DIGITAL CAMERA自転車から降りて、田圃の畦(あぜ)を流れる水路で顔を洗っていた時の事。畦に置いたハズの自転車グローブが無い。どこにも無い。でも確かにヘルメットの横に置いたのだ。嫌な予感がして、空を見た。カラスが何か加えている。私のグローブだった。おまえはそんな汗臭いモノが欲しいのか。怪盗カラスが取って行ったモノは、”赤い指切りグローブ”である。春先に仕入れたばかりだった。

カラスには収集癖がある。それを私に教えてくれたのは、子供の時に視たTVアニメ『あらいぐまラスカル』である。ラスカルはスターリングの姉から1セント銅貨をもらうのだが、それをカラスのポーに取られてしまう。ポーの巣には、たくさんの金属片や硝子片が貯めこまれていた、という巻だった。子供心に、そのシーンが妙に印象深かった。ネットで調べると、第12話『本と1セント銅貨』とあった。

カラスは、光モノや硝子を好む事で知られるが、どうやら”赤いモノ”も大好きらしい。私の赤い指切りグローブは、大原野のどこかにある巣にコレクションされているという事だろう。やばい事に、能天気にも、再び赤い指切りグローブを仕入れてしまった。盗みの手際からして、大原野のソヤツは相当のテダレと思われる。そしてたぶん私は狙われている。こんど大原野でグローブを外したら、ジャージのポケットに入れようと思う。

 

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