女優と彼岸花

季節の変わり目である。朝晩は冷え込むようになってきた。暑かったり、寒かったり。寝る時に何を被ればいいのか。やっと最近、寝間着を短パンから長いスウェットに変えた。

西山の麓、大原野の田園では、稲穂が実りの頭を垂れている。それを乾いた風がユサユサと揺らす。空を見上げれば、並んだイワシ雲が秋の到来を告げていた。

秋ともなれば、オヤジは辺りを放浪する。駆るは、四季の変化を股間の筋肉と鼻の粘膜から感じさせてくれるという自転車である。西山山麓は坂道が多いから、時速は20キロかそれ以下だ。そんな速度に夢中である。肺に酸素を取り込み、ペダルを踏んで観る景色はもう麻薬だ。

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十輪寺のなりひら桜とコロナウイルス

コロナウイルスの影がひたひたと忍び寄る3月最後の土曜日のこと。地元の桜を観ようと、家人を連れて散歩した。訪れたのは十輪寺(別名 なりひら寺)。大原野の峻峰、小塩山の麓にある十輪寺は、平安時代の粋なオヤジ在原業平の別邸だった場所である。夏の初めには紫陽花が咲く坂道の参道の先に、そう広くない境内がある。

本殿と回廊に囲まれて枝垂桜の古木が立っている。樹齢約200年の”なりひら桜”である。母屋の畳で寝転んで桜を見ろとの事なので横になった。眠ってしまいそうだった。

在原業平が活躍した平安時代は天然痘や麻疹(はしか)など多くの疫病があったと伝わる。平安時代は遣唐使で大陸との交易が盛んになった時代である。その事と疫病の蔓延は無関係ではないらしい。人の往来が疫病を運ぶ。それは今も昔も同じだ。

今現在、世の中はコロナウイルスが猛威を振るっている。どうやら京都にも緊急事態宣言が布かれそうだ。近畿の中心である大阪、神戸、京都の三都は、なす術もなくコロナウイルスの顎にくわえられてしまった。ブログ更新をほったらかしていた大原野の自転車オヤジが、またまた無責任は承知で雑感を述べる。
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夏の花

連日の猛暑である。日本列島に熱風を吹き込む台風が屯するここ数日は、もう不快極まりない。京都盆地は文字通り蒸し風呂である。そんな中でも、ウロウロ出かけて撮った写真を少々。暑さをモノともしない夏の花。暑苦しいので、オヤジの能書きは短めに。

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尾道ラーメンと備中国分寺と横溝映画 -瀬戸内しまなみ海道の旅その4-

自転車を室内に置きたいと言うと、フロント係は、快く応じてくれた。そして、ベッドの足下にビニールシートを敷いてくれた。ベッドの足下は、自転車を置くには、ちょうど良いニッチなスペースだった。

尾道ラーメン 一丁福山駅前の繁華街に出た。駅前の路地を歩いて、少し迷って、お目当ての店を見つけた。『尾道ラーメン 一丁』である。ネット評によると、地元では知らない者はないぐらいの超の付く人気店という事だ。

カウンターだけの店は、すでに満席だった。待ち客までいる。ハッキリ言って店は狭い。しばらくすると席が空いた。

尾道ラーメン 一丁入口付近にある発券機で食券を買う方式である。注文は、ラーメンとチャーハンのセット。

背油が浮いた深い色の醤油ラーメンが出てきた。チャーシューと刻みネギが乗っている。麺はストレート。入口に製麺所と書いてあったので、自家製麺だろう。たちまち平らげた。おいしゅうございました。

ホテルに戻って、もう一度風呂に入った。今日の走行距離は、ここしばらくなかった運動量である。オヤジはハリキリ過ぎである。どうやら代謝が追い付いて無いようだ。身体は疲れていたが、老廃物を出すためか、どんどん発汗していた。

ビールを飲んで、ベッドに横たわった。別に心配していないだろうが、スマホで、家人に無事を報告したり、明日の天気を見たりした。それも束の間。睡魔の懐に呼ばれるのに時間は掛からなかった。

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多々羅の龍と尾道と渡船フェリー -瀬戸内しまなみ海道の旅その3-

多々羅大橋には龍が棲んでる。橋の中ほどの愛媛と広島の県境を過ぎて、しばらく進むと、多々羅鳴き龍というスポットがある。そこは、橋のワイヤーを束ねる主塔の根本にあたる。そこでパンと両手を叩いた。すると、ヴァン、ヴァン、ヴァン・・・と音が響鳴して空へ昇っていった。鳴き龍である。

多々羅鳴き龍の動画

多々羅大橋伯方島の塩、生口島の檸檬、因島の除虫菊、その他諸々、しまなみに海道は名産やグルメが多くある。しまなみ海道の見どころは、多くのメディアで紹介され、同海道を特集した雑誌は数知れない。今や、サイクリスト達から、最も注目される観光地となっている。注目は国内だけとは限らない。行く先々で相当数の外国人サイクリストを見かけた。

瀬戸内海はその名の通り、日本列島の内海である。穏やかで温暖な気候。すべては海と太陽の恩恵の上にある。自転車で走れば、かいま見える島の生活や文化が示唆的である。どうしようもない都会の価値観に毒された頭には良薬だ。島と島を繋いだ道は、海と空を貫いて延びる。時速20キロで見る景色が命を洗濯してくれる。 “多々羅の龍と尾道と渡船フェリー -瀬戸内しまなみ海道の旅その3-” の続きを読む