天ヶ瀬ダムと石山寺と南禅寺の青瓶珈琲

アーチ型のダムサイト越しに紅葉が燃えていた。晩秋の弱い太陽が照らすのは金糸銀糸の広葉樹たちだ。桜も紅葉も散りぎわが美しいというが、さもありなん。人造物であるコンクリート壁と自然とが作る風景は見事である。

師走になったばかりの平日、車の助手席に家人を乗せて家を出た。今時は、北の方から寒気団が下りて来ない限り、穏やかな天候が多い。朝の空気は乾いて凛としている。京都の紅葉劇場も千秋楽が近いが、紅葉を観ようとやって来たのは、宇治川の上流、天ヶ瀬ダムである。ベタでささやかではあるが、夫婦紅葉散策は恒例の行事である。

小学校の遠足だったり、釣りだったり、若い頃、赤いクーペに乗って夜な夜な攻めた宇治川ラインだったり、誰かの車がオシャカになったり、思い出はいろいろある。そんな天ヶ瀬ダムだが、オヤジになった今、年に数回は、ロードバイクでやって来る。時速20キロで観る景色はどうにも魅力的だ。

“天ヶ瀬ダムと石山寺と南禅寺の青瓶珈琲” の続きを読む

新年走行会とお婆さんの囲炉裏

猿丸神社にはちゃんと猿がいた。社を守る狛猿である。境内は広くないが、脇に休憩小屋があった。屋根には煙突が見える。中に入ると囲炉裏があって、法被姿のお婆さんが番をしていた。挨拶をして長椅子に座ると、お茶を入れてくれた。
あれこれ話すと、宮司のお母さんで、御ん年90歳だという。この集落に生まれて、猿丸神社に嫁いだのだという。ずっとここで暮らして来たらしい。山間の集落、神社、囲炉裏、お婆さん、これだけ見れば、もうなんだ、時代は明治か大正か、時間の流れが止まったような空間だった。居心地は良い。囲炉裏で温まると動くのがイヤになって来た。
DSC01538.JPG
話は朝に戻る。良い天気だった。倶楽部Gottaniの新年走行会である。自転車乗りの交差点、御幸橋に男前五人が集まった。uenoさん、mackyさん、みーこさん、nasubiさん、僕である。みーこさんは体調がすぐれないにも係わらず、見送りに来てくれた。流れ橋まで走って、みーこさんとは別れた。
青空が広がる木津川を下って、山城大橋を渡って、峠を越えて、宇治田原にやって来た。車の来ない旧道は快適だ。並走しながら話もはずむ。途中、ローディの大集団とすれ違ったりしながら、ズンズン登って行くと猿丸神社の広告塔が見えて来た。
お婆さんの囲炉裏小屋を後にして、猿丸神社の裏山を登った。前々から登りたいと思っていた。だが、これが曲者だった。ヘロヘロになりながら、小癪なアップダウンを繰り返して、幾つも峠を越えた。山上からは街が見下ろせた。
DSC01551.JPG
宇治川ラインを駆け抜けて、平等院の参道にある御茶屋で休憩した。宇治川を見渡す二階の間で、蕎麦やら、善哉やら、抹茶やら、何や缶やと食って話した。自転車乗りと過ごす時間は特別に楽しい。御茶屋は中村藤吉平等院支店という。ロケーションが素晴らしい。

宇治平等院と茶団子付き460円也

宇治の「平等院」を有名にしたのは何と言っても「十円玉」だろう。思えばガキの頃、駄菓子屋に行くのに握りしめていたのは何時も十円玉だった。その十円玉に描かれた「平等院」は宇治橋の上流左岸にある。同院は世界文化遺産に登録される程の有名寺院だがその敷地は驚く程こじんまりしている。有体に言うと狭いのだ。
IMGP0251.jpg
本堂の左右に延びる廊下は翼にみたてて「翼廊」と呼ばれ、後ろには尾になる「尾廊」(下の写真)がある。本堂屋根には二羽の「鳳凰」が居座る。「平等院鳳凰堂」と呼ばれる所以だ。ここの主であり、極楽浄土へのホストである「阿弥陀如来像」は留守だった。なんでも入院中なんだそうだ。
IMGP0260.jpg
偽札で騒がしい昨今だが、新1万円札の裏面には平等院の「鳳凰像」が描かれている。日銀はその3号券であるナンバー「A000003A」を同院に寄贈している。それは敷地内のミュージアム「鳳翔館」に展示されている。因みに1号券「A000001A」は日銀貨幣博物館(東京・日本橋)に、2号券「A000002A」は福沢諭吉ゆかりの慶応義塾に収められたとの事。
IMGP0281.jpg
「平等院」に通じる参道には宇治茶の店が並ぶ。その内の「なかむら」で休憩する。宇治川を見渡す2階座敷で「雁がね茶」を飲む。茶団子付き。460円也。僕の保護者は「煎茶」を撰んだようだった。