地球の公転に合わせて、季節の歯車はギリギリと動いている。お前は見たのかと言われそうだが、たぶんそうだ。本当の夏が来る前のニッチな時期、気まぐれな梅雨前線が差配する天候は、なんでもありだ。奇術師の手業よろしく、雨雲、降水、太陽、寒暖、虹、落雷と変幻自在である。曖昧で難解な節気に、四季の深淵を見るようだ。
梅雨雲が太陽を隠した日曜日、国道307号をドライブした。座ったのは、サドルではなく運転席で、握ったのは丸いハンドル、踏んだのはアクセルペダル、助手席には家人である。琵琶湖のすぐ足元を横断する国道307号は、ローディーたちが行き交う人気の道である。信号が少なく適度なアップダウンがあるワインディングロードは湖東へと延びる。
夏も近づく八十八夜。。梅雨に磨かれた新緑が深まる宇治田原は折りしも、新茶のシーズンである。茶畑を縫って行く国道のあちこちに『新茶』の幟が立っていた。隣の家人が言う行き先は、宇治田原と信楽の山間にある小さな寺である。