「桂川には行ってはいけません」
私が小学生だった頃、学校の先生からいつも聞かされていた言葉だ。桂川は行ってはいけない場所だった。もちろん水の事故から子供を守るためなのだが、夏休みの前になると、語気はさらに強まる。全校生徒が集まる朝礼の場で、校長が言う。「長い夏休みに入りますが、桂川に絶対に近づいてはいけません」と念を押された。
そうは言うものの、桂川は、魚やザリガニをはじめ、水場の生物がいっぱいいる。絶好の遊び場だし、自然の宝庫だ。行けば楽しいに決まっている。しかも目と鼻の先だ。子供たちにしてみれば、”禁断の魔境”こそが行ってみたい場所である。桂川はそんな場所だった。